倉知淳『星降り山荘の殺人』ネタバレ感想とあらすじ紹介

倉知淳の『星降り山荘の殺人』を読みました。

読もう読もうと思いつつ、長らくあんまり本が読めておらず…やっとこさ!

 

結論からいうと「めっちゃおもろいっ…!!!」です。(滲み出る語彙力のなさ)

 

20年以上も前に出版された超有名作品なので、ミステリー好きはとっくにご存知かと思いますが、これから読む方とか、最近読んだ方ももちろんいらっしゃるはず。

ということで、あらすじや感想とともにご紹介したいと思います。

 

ただし、感想でネタバレしちゃうので、まだ読んでいない方はあらすじまでにしておいてください。

 

正直言って何も知らずに読むのが一番楽しめると思いますので、ここでUターンして読み終わってから戻ってきていただいて、ぜひ面白さを分かち合いましょう。(丁寧なふりしてどことなく図々しい性格が隠しきれてへんねん)

 

 

『星降り山荘の殺人』ってどんな小説?

『星降り山荘の殺人』は、倉知淳によるミステリー小説。

 

1996年に出版されたので、もう25年ほど前の作品になりますが、古臭さを感じたり劣化してたりなんてことはありません。

携帯とかラジオとか、そういう部分に懐かしさを覚えるみたいなことはあるものの、古さは全くもって気になりませんでした。 

 

ページ数は解説なんかも含めて540ページくらいなので、比較的ボリュームがある方…かな?

京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」読んでから麻痺してちょっと感覚が…どこからが分厚いんですかね?(そんなん聞かれても知らんがなってな)

 

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面白くてどんどん読めるから、ページ数は気にならへんで。知らんけど!

 

余談なんですけど、前に何気なく関西人の魔法の言葉「知らんけど」について調べたら、意味とか用法が真面目に分析されててちょっとびっくりしました。

どっちやねん、知らんのに言うな!って思われるんですね…なんか申し訳ない気持ちになりますね。

 

なんと言われようと使うんですけども。(使うんかい)

 

さて、この『星降り山荘の殺人』はですね、ミステリー好きの血が騒ぎ出して今にも踊り狂いそうな要素がギュッと詰まった1冊になっております。

 

1つ目は、みんな大好きどんでん返し。

もはや説明不要ですね、真相に辿り着いたと思いきや、そこから見事にひっくり返されますよってお話です。

 

どんでん返しって、それを知ってしまう時点で一種のネタバレですよね。

知りたくなかった方いたらほんまにごめんなさいですm(._.)m

 

2つ目はクローズド・サークル。

クローズド・サークルもご存知の方が多いかもしれませんが、簡単に説明しときましょう。

 

何かしらの事情によって外界との連絡手段や交通手段が断たれた状況、そんな状況で事件が起こる作品のことです。

よくあるのが、災害なんかで物語の舞台が閉ざされた環境になるパターンで、「吹雪の山荘」とか「嵐の孤島」なんて言われます。

 

星降り山荘の殺人は、まさしく吹雪の山荘ものですね。

 

そして3つ目は、作者から読者への挑戦状。

各章の冒頭に「主人公と探偵は犯人ではない…」などなど、その章で起こる出来事や読者へのヒントが嘘偽りなく書かれています。

 

まず本編の主人公が登場する

主人公は語り手でありいわばワトソン役

つまり全ての情報を読者と共有する立場であり

事件の犯人では有り得ない

(引用:倉知淳 新装版『星降り山荘の殺人』p.7)

 

和夫は早速新しい仕事に出かける

そこで本編の探偵役が登場する

探偵役が事件に介入するのは無論偶然であり

事件の犯人では有り得ない

 (引用:倉知淳 新装版『星降り山荘の殺人』p.24)

 

こんな感じで挑戦的かつフェアな注釈が入っています。

  

必死に謎を解くのもよし!

諦めてサクッと見事に騙されるもよし!

必死に謎解いて結局サクッと騙されるもよし!

 

思いっきり楽しみましょう。(私?もちろん3つ目ですけど( ^ω^ )?)

  

ここがPoint!
  • どんでん返しの名作
  • クローズド・サークル(吹雪の山荘もの)
  • 読者への挑戦状付き

  

あらすじ

広告会社に勤務する主人公の杉下和夫(すぎした かずお)は、会社の上司と揉めたことでカルチャークリエイティブ部(いわゆる芸能部)に左遷される。

 

そこでの和夫の仕事は、女性に絶大な人気を誇るスターウォッチャー星園詩郎(ほしぞの しろう)のマネージャー。

星園の出張に同行する和夫は、物語の舞台となる埼玉県渡河里岳コテージ村へとやってくる。

 

そこには和夫と星園のほかにも、コテージ村を所有する不動産会社の社長とその部下、UFO研究科、売れっ子作家とその秘書、女子大生など個性豊かなメンバーが集まっていた。

 

夕食を終えた後、思い思いの時間を過ごし一夜明けた朝…殺人事件が発生。

 

警察へ知らせようとするも、電話もなく、悪天候による吹雪や雪崩によって下山も困難となってしまい…。

 

登場人物

登場人物 概要
杉下和夫(27) 主人公で星園のマネージャー見習い
星園詩郎(31) スターウォッチャー
岩岸豪造(51) 不動産開発会社社長
財野政高(38) 岩岸の部下
草吹あかね(36) 人気作家
早沢麻子(25) あかねの秘書
嵯峨島一輝(43) UFO研究科
小平ユミ(20) 女子大生
大日向美樹子(21) 女子大生

 

感想ネタバレあり!

ここからはネタバレありなので、読んでない方はご注意くださいまし。

 

舞台は埼玉県渡河里岳コテージ村という山奥のキャンプ場。

電気もガスも水道も通っておらず、おまけに電話もない。

 

主人公を含む個性豊かで癖の強い人たちがコテージ村に集まったところ、連続殺人事件が発生!

雪崩と吹雪で道が塞がれ、探偵と助手が事件を解決していく…。

 

王道かつベタな設定と展開に、テンション上がります。

 

そしてスターウォッチャーだかなんだか謎な肩書きを持つ星園のキャラがとくに濃ゆい。 

星を愛でるキザなイケメンで、女性ファンにキャーキャー言われ、語り手でありワトソン的存在である和夫からは「なんやねんコイツ…」と引かれ気味。

 

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でもスターウォッチャー、実は知的やねん

 

そう、星園が意外にも知性を兼ね備えた人物であることが判明。

さらに、過去に起こった凄惨な事件の濡れ衣を着せられたある人物の冤罪をはらすという目標を持っていることを知ったために、和夫もちょっと尊敬するように。

 

この過去を語られたことで、スターウォッチャーにそんな過去があったとは…と、和夫と同じくちょっと星園を気に入ってしまいましたね。

 

そんな星園の探偵助手として頑張る和夫とともに謎解きに挑んでみたものの、動機が全く見えない…。

女子大生でも人気作家でもその秘書でも…誰が犯人でもおかしくない気がする…。

 

注釈を意識しながら「犯人誰やろ〜」とかなんとか考えながら読み進め、ついに星園が謎解き開始!

いろいろな角度から謎を解いてゆき、星園が指摘した犯人は…

 

杉下和夫!?

 

主人公である和夫はワトソン的存在であり、注釈にも主人公は犯人ではないと書かれていました。

「え?和夫は犯人ちゃうねやろ…?どゆこと??」というところで、どんでん返し!

 

作家の秘書の早沢麻子が突然しゃべりだし…犯人は星園であると指摘します。

すべては星園の犯行であり、和夫に罪をなすりつけようとした、と。

 

あ〜やっぱり。やられた。

この物語の探偵は、星園ではなく麻子やったんですね。

 

注釈にキレイに騙されると、探偵も犯人ではありえない=星園は犯人ではないと思っているはず。

しかーし!注釈に探偵役が登場すると書かれてはいるものの、星園=探偵とは書いてない。

 

そして探偵役に出会うという注釈の章で、和夫は星園の前に早沢麻子に出会っている。

実は探偵は早沢麻子であり、探偵ではない星園は「犯人として有り得る」と。

 

見事なミスリードを誘う注釈!うまい!

 

実は私、割と序盤に「探偵って麻子のことちゃう?」って思ったんです。

いや嘘じゃないんですほんまに。さえてる〜〜フゥー!(腹立つから黙らっしゃい)

 

でも、和夫が最初に会ったときは名前が出ず、山荘に到着してから名前が出るんですよね、麻子さん。(急に馴れ馴れしいな、誰目線や)

確かにちょくちょく喋るし描写もありますけど、めっちゃ推理するわけじゃないし脇役っぽさが拭えず印象もちょい薄め…。

 

対して星園はあまりにも出ずっぱりやし、自ら事件解決に乗り出すし、紳士やし、語り出した過去のせいでちょっと信じたい気持ちも湧いてしまって、いつしかその考えはフワフワと頭の片隅へと追いやられていきました。

 

結局は確証を持てずラストまでいったので、騙されたも同然ですね。

名前が出るわ推理力ありそうやわ、事件の捜査もするわ、そりゃ星園が探偵って思い込んじゃいますよね〜。

 

 

しかも星園の過去がこれまた続編書けそうな感じの内容やったし…もしかしてこれシリーズの第1作目?みたいな雰囲気醸し出してるし…。(めっちゃ言い訳するやん)

 

これについては「星園の作り話ちゃいます?」みたいな終わり方で少しモヤっとしたんですけど、そのエピソードで和夫と同じように星園をちょっと信じてしまったフシがあるので。

温厚で紳士なスターウォッチャー星園詩郎というキャラクターで世間を騙してたように、和夫を騙すためにそんな過去の話をわざわざ作り上げたんかもしれませんね。

 

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にしても最後の豹変ぶりにはかなり引いたし、ここでUFO研究科の株ちょっと上がるんおもろない?

 

動機が弱いという意見も多いようで、私も一瞬そう思いましたが「でも人間て意外とそんなもんなんかもな」というところに着地しました。 

 

完璧に思いもよらなかった、とまではいかなかったものの、続きが気になって一気読みしてしまう面白さ。

そして寝不足で翌日は白目剥きながら仕事してました。

 

新しい本を読むこと自体久しぶりでワクワクでしたが、大好きな叙述トリックがお見事!な1冊で大満足です( ^ω^ )